充実した老後を過ごす秘訣は、
“楽しい”を求めてストレスをためないこと
志布志市シルバー人材センター会員
重永 ヒデ(シゲナガ ヒデ)さん
年齢 | 75歳 |
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活動内容 | 杉苗の挿し付け |
活動時間 |
7時間/日、3日/週 |
※ご年齢は2020年12月時点のものです
「もうじき76歳の誕生日なんです。早くも、76歳と書かれた書類が届くんですよ」と朗らかに笑うのは、重永(しげなが)ヒデさん・75歳だ。週に3日、1日7時間、曽於地区森林組合で杉苗の挿し付け作業を行っている。森林組合での仕事を始める以前は、公務員、店舗経営、遺跡発掘などさまざまな仕事に取り組んできた。年齢を感じさせないアクティブさで毎日を過ごす重永さんに話を聞いた。
和気あいあいとした雰囲気、「話しながら作業するのが楽しい」
重永さんがシルバー人材センターから派遣されて、鹿児島県にある曽於地区森林組合で働くようになったのは3年前。森林組合の仕事は毎年12月から3月までの期間限定だ。森林組合員が山から切ってきた杉苗を既定の寸法に切り、苗に黒いビニールシートを巻き付けてトレーに一つずつ並べていく。杉の苗が十分に枝葉を伸ばして生育できるよう、並べ方にもルールがある。最初は皆、このルールを覚えるのに苦労する。ほかにも、水やりや堆肥・肥料の用意など、仕事は多岐にわたるため分担して作業を行う。重永さんをはじめとした女性は、主に苗にビニールシートを巻き付けて並べる仕事が担当だ。
曽於地区森林組合のスタッフのうち、3分の1を占める11人がシルバー人材センターから派遣されたスタッフだ。たくさんの仲間と冗談を言い合い、フォローしあいながら和気あいあいと仕事に取り組んでいる。職場の雰囲気はとても良い。
「普段会えない人と一緒に働けるのがうれしいです。近い場所で仕事をするから、皆と話しをしながらできることも楽しい。ハウスの中だから、雨が降っても仕事はある。天気に左右されて仕事がないということがないのはありがたい」時間も長く、大変そうに思える仕事。しかし、実際に働く人たちはその中でプラスの面を見つけ出し、働くことを楽しんでいる。
シルバー人材センターの仕事からボランティアまで、幅広い取り組み
重永さんは非常に多彩な経歴の持ち主だ。
生まれ育ったのは松山町(鹿児島県曽於郡旧松山町。現在は合併して志布志市)。結婚して出産するまでは松山町の町役場に勤務した。出産・育児のため退職した後は、子育てをしながら鮮魚や肉を扱う雑貨屋を経営。子どもの手がかからなくなってからは店を辞めてパートに出たという。重永さんの父がボランティアに熱心だったこともあり、重永さん自身も数々のボランティアにいそしんだ。年齢を重ねてからはシルバー人材センターに登録し、センターから派遣されて働くかたわら理事も務めた。シルバー人材センターでの最初の仕事は、庁舎周りの花壇に花を植える仕事。その仕事がない期間は他の仕事も積極的に引き受けた。
「シルバーから派遣されて、遺跡発掘の仕事もしていました。鋤簾(じょれん)という鍬のような道具を使い、遺物や遺構がないかを地面を薄く削りながら探していくのです。遺跡発掘は好きな仕事だったのですが、ずっと座っているから足が弱くなって歩けなくなって」悩んだが、自分の体のほうが大事。遺跡発掘の仕事を辞めることにした。
高齢化の進む日本では、介護の現場は常に人手不足だ。重永さんは市が実施する講習を受け、老人ホームや小規模な介護施設で介護も行った。「施設にいる人は、恵まれた人だと気付きました。周りを見ると、家に一人でいる人もいる。足腰が悪くなればグラウンドゴルフにも行けないし、家に誰かが来てくれるわけでもないと、話し相手がいなくてかわいそうです。ですから、今まで関わり合った人の中で、昼間一人の方の家をときどき訪問するようにしました」
しかし、コロナ禍になり訪問しづらくなったため、「せめて自分にできることを」と電話で安否確認をしているという。けれど、重永さんからの電話を楽しみにして、心待ちにしている人は多いのではないか。親しみやすさと温かみがにじむ重永さんの話を聞いていると、そう感じられた。
できるかできないかは自分で試して判断し、年齢にとらわれない
もうじき76歳になるとは思えないほどアクティブでパワフルな重永さんだが、元気の秘訣は何だろうか。
「私のモットーは、今日一日をどうやって楽しく過ごすかです。黙って仕事をしたくないから、『今日も楽しくやろうね』と声をかけています」自ら声をかけ、職場の雰囲気を作る。さらに、考え方にもヒントがあった。「病気だ、元気だ、高齢だと、年齢で決めるのではなく、年齢抜きに自分自身が今どれだけ元気で動けるか、働けるかを考えることが大切だと思います。自分で試してみて、どこまでできるかを判断すること。仕事では、何か目的を持つようにしています。目的がないと明日に回してしまいます。それでは何も達成できませんよね」前向きでポジティブな重永さんを慕う人は多い。森林組合の仕事でグラウンドゴルフをお休みする期間、仲間たちは重永さんの夫に「奥さんはこないの」「連れてきなさい」と言われるのだという。
「今は忙しくて行っていませんが、グラウンドゴルフに行ったらその仲間と楽しく過ごせます。大事な楽しみのひとつです。楽しみを求めつつ健康に気をつけて、ストレスをためないようにしています」
趣味のガーデニングに仲間とのグラウンドゴルフ、夫との時間、そして仕事とボランティア。あちこちにアンテナを張り巡らせ、生き生きと過ごす重永さんを見ていると、老後をどう過ごせば毎日が輝くのかが分かるような気がした。
志布志市シルバー人材センター
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